[p.0793]
大鏡
七/太政大臣道長
男君は〈○中略〉今一所は馬頭にて顕信とておはしき、御わらはなこれ君なり、長和元年壬子正月十九日、入道し給ひて、この十余年仏のごとくしておこなはせ給ふ、いと思ひかけずあはれなる御事なり、〈○中略〉高松殿〈○藤原道長妻源明子、顕信母、〉の御夢に、左のかたの御ぐしうしろおなからよりそりおとさせ給ふと、御らんじけるお、かくて後にぞ、これが見ゆるなりけりとおもひさだめて、ちがへさせいのりなどおもすべかりけるおと、おほせられける、