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太平記

民部卿三位局御夢想事
民部卿三位殿、〈○中略〉少し御目睡有ける、其夜〈○北野沚参籠〉の御夢に、〈○中略〉此老翁世に哀なる気色にて、雲ひ出せる詞は無て、持たる梅の花お、御前に指置て立帰けり、不思議やと思召て、御覧ずれば、一首の歌お短冊にかけり、
廻りきて遂にすむべき月影のしばし陰るお何嘆くらん、御夢覚て歌の心お案じ給に、君〈○後醍醐〉遂に還幸成て、雲の上に住ませ可給瑞夢(○○)也と、憑敷思召けり、