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栄花物語
二十九/玉の飾
むまの入道の君〈○藤原顕信〉は、はじめ山に無動寺におはせしかど、後は大原にてすごし、給つるお、月比ものお露まいらざりければ、中堂に参らせ給て、二七日こもりて、たゞいきしにおつげさせ給へと申させ給ければ、なに事ともなく、たゞしにまうけおせよと(○○○○○○○○○)、夢に見給ければ(○○○○○○○)、無動寺におはしまして、権僧正山の座主に、かう〳〵の夢おなんみつる、さればいまはかふなりとのたまはすれば、僧正などてか夢はさみゆれば(○○○○○○○)、いのちながし(○○○○○○)とこそ申せと申給ければ、いのちながからんおうれし、ながらへんおうれしと、思はゞこそあらめ、たゞほとけのつげさせ給つるうれしき也、〈○下略〉