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更科日記
おなじ心にかやうにいひかはし、世中のうきも、つらきも、おかしきも、かたみにいひかたらふ人、ちくぜんにくだりて後、月のいみじうあかきに、かやう成し夜、宮にまいりてあひては、つゆまどろまず、ながめあかいしものお、こひしく思ひつゝねいりにけり、宮にまいりあひて、うつゝにありしやうにて有とみて、打おどろきたれば夢成けり、月も山のはちかうなりにけり、さめざらましおと、いとゞながめられて、
夢さめてねざめの床のうくばかりこひきとつげよ西へ行月