[p.0805]
今昔物語
三十一
蔵人式部掾貞高於殿上俄死語第廿九
頭の中将〈○藤原実資〉の夢に、有し式部の丞の蔵人内にて会ぬ、寄来たるお見れば、極く泣て物お雲ふ、聞けば死の恥お隠させ給たる事、世々にも難忘く候ふ、然許人の多く見むとて集て候ひしに、西より出させ不給ざらましかば、多の人に被見繆て、極たる死の恥にてこそは候はましかと雲て、泣々手お摺て喜ぶとなむ見えて、夢覚にける、