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続古事談
一/王道后宮
一条院の御時、大地震のありける日、冷泉院おほせられけるは、池の中島に幄おたてよ、おはしますべき事ありと仰せられければ、人心えず思ながら、たてヽ御簾かけ筵しきたるに、午時許りにわたり給にけり、其後未時ばかりに大地震ありて、おそく出る人はうちひしがれけり、人々此事お問たてまつりければ、去夜の夢に、九条大臣〈○藤原師輔〉来て、明日の未時に地震あるべし、中島におはしませと、つげつるなりとぞ仰せられける、聞人涙おながしけり、彼大臣の霊つきそひて、まもりたてまつるなるべし、