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大鏡
四/右大臣師輔
大かた此九条殿〈○藤原師輔〉いとたゞ人にはおはしまさぬにや、おぼしめしよるゆくすえの事なども、かなはぬはなくぞおはしましける、くちおしかりける事は、いまだわかくおはします時、ゆめに朱雀院のまへに、左右のあしお、にしひんがしの大宮にさしやりて、きたむきにて、内裏おいだきてたてりとなん見えけると、おほせられけるお、御前になまさかしき女房の候けるが、いかに御〈○御原脱、拠一本補、〉またいたうおはしましつらんと申たりけるに、御夢たがひて、かく御〈○御下原有子まごは四字、拠一本刪、〉しそんはさかへさせ給へど、摂政関白えしおはしまさずなりにし、又おすえに、おもはずなるさまに、御事のうちまじり、そちどの〈○藤原伊周〉の御事などぞ、これがたがひたるゆへに侍る也、いみじき吉左右の夢も、あしさまにあはせつればたがふと、むかしより申つたへて侍ることなり、荒凉して心しらざらん人のまへにてゆめがたりな、このきかせ給ふ人々、しおはしましゝそ、いまゆくすえも九条殿の御ぞうのみこそ、とにかくに〈○とにかくに原作とく、拠一本改、〉つけて、ひろごりさかへさせ給はめ、