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大鏡
五/太政大臣兼家
そのほどは夢とき(○○○)も、かんなぎも、かしこきものどもの侍りしぞとよ、堀川の摂政〈○藤原兼通〉のはやり給ひし時に、この東三条殿〈○藤原兼家〉は御つかさどもとゞめられさせ給ひて、いとからくおはしましゝ時に、人の夢に、かの堀川院より、やおおほくひんがしざまにいるお、いかなるぞとみれば、東三条にみなおちぬと見けり、よからず思ひきこえさせ給へるかたより、やおはせ給はゞあしき事ならんと思ひて、とのにも申ければおそれ給ひて、夢ときにとはせ給ひければ、いみじうよき御夢なり、よの中のこの殿にうつりて、あのとのゝ人の、さながらまいるべきが、見えたるなりと申けるが、あてざらざりしことかは、