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比古婆衣

鹿のちがへ
阿留多伎貞樹が、おのれ〈○伴信友〉がもとに来かよひて、物かたらふちなみに語りけらく、〈○中略〉鹿の猟人に遭たる時、此方に向きて、前足おやりちがへてつき立て見おこせてある事お、ちがへおすといふなり〈○中略〉といへり、〈○中略〉さてかのちがへの歌〈○吉備大臣夢違誦文〉お、夢違の歌といへるは、相夢に凶お吉に転ふるやうのことお、ちがふるといふに、〈○註略〉其お鹿のちがへおするにそへて、兎餓野の鹿の相夢の古事に、とりあはせて作れる歌と聞えたり、