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夏山雑談

平家物語に、実盛がいひし詞に、あつはれおのれは、日本一の剛のものと、くむてうすよのふれとて〈○中略〉とあり、此こヽろは、我が如き日本一の兵と組むといふかとて、組たりしことなり、てうす雲ことばヽ、今も越路にいふとなり、又のふれとは、さねもりが生国越前の国のことばなり、今も、越前にては、詞のあとに、のれといふ詞ありとなり、俗歌(○○)に、加賀のか(○○)に越前のれ(○○)に、都のえ(○○)東男ののさ(○○)のおかしさ、と雲こともあるなり、作者〈信濃前司行長〉の心おつけて書ぬるおしらずして、実盛と雲謡にぐんでふずよと雲は、謡のあやまりなり、ぐむでふずよとうたふによりて、いろ〳〵の説おつけて雲は、皆僻ことなり、組てふすよといへば、能く聞へてすむことなり、