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碩鼠漫筆

東訛りお心すべき事
さしてやくなき事にはあれども、東国人の物言には、おもへばおおもひばといひ、こひしきおこへしきなど雲事、歌よみ文かく者などの中にも、ともすれば雲ひいづる事あり、殊に合せておあはしてと雲へるは、然べき学者たちにも、常にしかかけるが見えたる、上方人の見おとすらむと思ふも、いと恥かしき業なり、万葉集の東歌に、訛謬たる語多く、拾遺集の物名に、あづまにて養はれたる人子は、舌だみてこそ物はいひけれ、とあるなどおおもへば昔も今もしかるにぞ有ける、