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徒然草

久しくへだゝりて逢たる人の、我方にありつる事、数々に残りなくかたりつゞくるこそあひなけれ、へだてなくなれぬる人も、程へて見るは、はつかしからぬかは、つぎざまの人は、あからさまに立出ても、興有つる事とて、いきもつぎあへず、かたり興ずるぞかし、よき人の物語するは、人あまたあれど、ひとりにむきていふお、おのづから人もきくにこそあれ、よからぬ人は、誰ともなく、あまたの中にうち出て、見ることのやうにかたりなせば、みなおなじく笑ひのゝしる、いとらうがはし、