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賤のおだ巻
一又其比志道軒とて、辻講釈おして世おわたる坊主あり、古今の名人にて、人物もはや老人にて、総て垢のぬけたるきれいなる者にて、人おへちまとも思はず、記錄物お講釈するに、始め少しの内実の事お雲て、夫よりおどけ立とわる口おいひ、様々に狂じて、人お笑はすること希代の者なり、