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十訓抄

或殿上人の五月廿日余、いとくらきに太后宮にまいりて、めうどうにたゝずみけるに、うへより人の音のあまたして来りければ、さりげなく引かくれてのぞきけるに、つぼのやり水に蛍のおほくすだくお見て、〈○中略〉しりなる人、かくれぬ物はなつむしのと、花やかにひとりごちたりけり、〈○下略〉