[p.0850]
古事記伝
二十五
阿芸登比(あぎとひ)とは、小児の初語お雲なるべし、阿芸は吾君(あぎ)にて、〈如此雲る例多し〉対へる人お指て雲、登比は事問(こととひ)の問(と)にて、言(いふ)に同じ、其は小児の初めて物言に、其対へる人お、吾君と雲お雲なるべし、今世に物言習に、遅遅(ちゝ)〈老翁〉婆々(ばヽ)〈嫗〉登々(とヽ)〈父〉加々(かヽ)〈母〉など言と、同じ意なり、〈書紀に得言とある訓は、此記に依れるものなり、されど得言字は、言の意にはくはしく当らず、〉