[p.0852]
志士清談
松平左衛門督忠継、生質外蒙昧なるが如くなれども、内明察にして且勇悍なり、〈○中略〉大坂に到て有馬玄蕃頭豊氏と其に、松平武蔵守利隆の営に会す、豊氏利隆の耳に属て私語す、忠継色お変て曰、武州我兄也、武州に所言吾に廋さるべき理なし、其言義ならば顕して言べし、其非義ならば密にも雲べからず、私語は疑お起すゆへんなり、起疑は兵法に不忌之や、何ぞ思慮なきと規されければ、豊氏我過てり、我言ふ所は爾々の事なり、少も邪意あるに非と、陳謝せらるれば、忠継微笑して最さあるべしとて已ぬ、