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徒然草

心なしと見ゆるものも、よき一言はいふものなり、あるあらえびすのおそろしげなるが、かたへにあひて、御子はおはすやととひしに、ひとりももち侍らずとこたへしかば、さては物のあはれは知り給はじ、情なき御心にぞものし給ふらんと、いとおそろし、子ゆへにこそよろづのあはれは思ひしらるれといひたりし、さもありぬべき事なり、恩愛の道ならでは、かゝるものの心に慈悲ありなんや、孝養の心なき者も、子もちてこそ親の志はおもひ知るなれ(○○○○○○○○○○○○○○○○○)、