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太閤記
十三
備前の宰相秀家卿小西お助成し衆にこへ渡海の事
小西思ふやう、忠州之城おも乗捕、弥抽忠勤ばやと、弟にて侍る主殿助木戸作右衛門尉など呼あつめ、御勢悉く渡海し、諸勢今明日之中参陣有べきとなり、いざ明朝忠州之城お忍び捕べきと思ふは、いかゞ有べしと雲ければ、何も猶なり、急ぎ給へとて、ひた〳〵と用意し、戌之刻に打立、漸く丑之時とおぼしき比、城の麓に忍び寄、瞳と時声お上、詍々声お学しかば、城中寝耳に水の入たるが如く(○○○○○○○○○○○)驚きあへりつゝ、矢夾間などおも塞あへず、忘却於親疎、我さきに退なんとのみせしなり、