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太平記
三十八
諸国宮方蜂起事附備前軍事
降人に出て、心ならず高名しつる兵共三百余騎、生捕お先に追立させ、鋒に頭お貫て馳来り、如鬼神申つる桃井が勢おこめ、我等僅の三百余騎にて、夜討に寄て、若干の御敵どもお打取て候へとて、仮名実名事新しく、こと〳〵しげに名乗申せば、大将鹿草出羽守お始として、国々の軍勢に至迄、哀れ大剛の者共哉、此人々なくば、争か我等が会稽の恥おば濯がましと、感ぜぬ人も無りけり、後に生捕の敵どもが委く語るお聞てこそ、さては降人に出たる不覚の人どもが、倒るヽ処に土(○○○○○○)お掴む(○○○)風情おしたりけるよとて、却て惡み笑れける、