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明徳記

暫く引えて都の方お顧たれば、我逃つる跡には人一人も見えず、猶内野には軍の有と覚えて、時の声幽かに聞ければ、是はそも何事に是迄逃たりけるぞや、我ながらもか程億病まで、弓矢の道に携りける不当さに、白昼のわざなれば、惡事千里お走る(○○○○○○○)、此事世には隠有べからず、然らば何の面有てか、憑たる人にも対面すべき、〈○下略〉