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明良洪範
十五
此作左衛門〈○本多〉三州に奉行たりし時、法度書お出されしに、農人一向用ひず、これに依りて下役人、用ひざる農人お召捕て差出す、作左衛門黙然として暫らく考へ居たり、してやがて其農人おゆるし遣り、法度書の高札お取寄せ、先の文字お皆刪らせ、いろはの仮字にて、何々の事おすると、作左作衛門が切ぞと、残らず平がなに書きかへて、建させければ、其後は法度お犯す者一人も無りしとなり、農人などは文字の読めぬもの、十人に九人あり、此故に作左衛門平らがなに書かへたるなり、人お観て法お説く(○○○○○○○○)こそ肝要なれ、