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塵袋

一きつねとらの威おかると(○○○○○○○○○○○)雲ふ如何
昔 〓の宣王時、昭奚恤と雲ふものお北国にすえて、つはものおしたがへたり、北方えびす是おおそる、宣王群臣にといたまふ、北方昭奚恤おおんるときく、いかんと、諸臣申すものなし、江乙と雲ふ者申さく、虎は百獣おもとめて是おくらふ、狐おえてくらはんとするとき、狐たばかて雲はく、女我おくらふ事なかれ、天帝われに命じて、もろ〳〵のけだものヽ長たらしむ、女もし我おくらはヾ、おそらくは天命おないがしろにするになりなん、女ふがことおもちいずば、我諸のけだものヽ有ん所おすぎゆかん、女わがしりへにしたがひて、ゆきて見よ、もろ〳〵のけだものヽ、われおおそれん事、たちどころにあらはれなんと、そのときに虎ことはりなりと思て、すてヽにげさりぬ、狐かく雲心は、虎若我しりへにしたがはヾ、もろ〳〵のけだもの虎お見て、おそれてにげ、はしりなん、けだものもしにげば、ふがけだものヽ長たるがゆへに、おそれてえぐるとおもはれんと、このゆへに虎お相具してけだものヽもとにゆかんと、たばかるお、とらこのはかりごとおさとらず、くはずしてさりぬなり、