[p.0941][p.0942]
翁草

勅製謎の御歌
秋風のはらへば露の跡もなし荻の上葉もみだれてぞ散る
是お月と解く、心は上の句露の跡なければ、つ文字也、下の句荻の上ばお散らせば、き文字のこる故に、月と成、其頃謎お好ませられ、勅製あまた有しとて、人のいへるは、四国の刀、麻糸ととく、〈心は〉阿波、讃岐、伊与、土佐の片名也、
待宵にふけ行かねの声きけば くるまうし(車牛)
あかぬ別れのとりはものかは はなれうし(放牛)
是らも勅製とかや雲める、実否は不知、 渭北春天の樹 江東日暮の雲 是お藻と解 心は、渭北―退き、江東―退く、右の跡はもの一文字のこる、是等も右の類ひ歟、