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北辺随筆

なぞ〳〵
又落書といふ事あり、江談抄〈に〉雲、嵯峨天皇之時、無惡善といふ落書、世間〈爾〉多々也、篁読て雲、無惡〈さかなくは〉善〈よかりなまし〉読雲々、天皇聞給〈天〉、篁〈か〉所為也〈と〉被仰〈天〉、蒙罪(らんお)〈卜する〉之処、篁申〈て〉雲更不可作事也、才学之道然君自今以後不可絶申(て)雲々、天皇猶以道理也(とし給ふ)、然者此文可読(しと)被仰(れてせ)令書給(ふ)とて、さま〴〵よみにくき事どもおあけられたり、此落書といふ物も、なほなぞ〳〵に似たるわざなれど、なぞ〳〵は、今俗にいふに同じかるべし、