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古事記伝
十一
伊波那佐牟遠(いはなさむお)は、寐者将(いはむなさ)宿にて、遠(お)は毛能遠(ものお)と雲意の辞なり、次なる須世理毘売の御歌に、伊遠斯那世(いおしなせ)ともあり、万葉二〈四十二丁〉に、奥波(おきつなみ)、来依荒磯乎(きよるありそお)、色妙乃(しきたへの)、枕等巻而(まくらとまきて)、奈世流君香聞(なせるきみかも)、〈世流は寐而有なり〉五〈八丁〉に、夜周伊斯奈佐農(やすいしなさぬ)〈安寐不令宿なり、斯は助辞、〉十四〈二十一丁〉に、伊利伎氐奈佐禰(いりきてななね)〈入来而寐よなり〉十七〈三十二丁〉に、吾乎麻都等(わおまつと)、奈須良牟妹乎(なすらむいもお)、〈奈須良牟は将寐なり〉十九〈十八丁〉に、安寝不令宿(やすいしなさず)、君乎奈夜麻勢(きみおなやませ)、また安宿(やすいし)勿令寝(なすな)、これらお合せて心得べし、寐(ぬ)てふ言は、那奴泥(なぬね)と活くなり、〈○註略〉又伊と雲も、寐(ぬる)ことなるお、寐乎安宿(いおやすくぬる)、宿毛不寝(いもねぬ)など、重ねて雲も常なり、