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類聚名物考
言語七
ころぶ 自伏
今俗には転躓おころぶといふには異なり、されどもその意は相同じ、ころぶとは自伏なり、ころはおのづからといへる古語にて、おのづからふすなり、万葉巻二讃岐狭岑島視石中死人、人麿の長歌の中に、浪音乃(なみのとの)、茂浜辺乎(しげきはまべお)、敷妙乃(しきたへの)、枕爾為而(まくらになして)、荒床(あらとこと)、自伏君之(ころぶすきみが)、家知者(いへしらば)雲々とあり、これその証なり、同巻これより上に、木瓶殯宮の長歌〈人麿〉にも、玉藻之如久(ごとく)、許呂臥者(ころふせば)とあるも、うちふすさまおいふなり、