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古事記伝
三十九
許夜流許夜理母(こやるこやりも)は、伏(こや)る伏(こす)りもなり伏(ふぬ)お許夜流(こやる)と雲は古言なり、書紀推古巻、太子の御歌に、許夜勢屢諸能多比等阿波礼(こやせるそのたびとあはれ)、万葉五〈五丁〉に、宇知那比枳(うちなびき)、許夜斯努礼(こやしぬれ)、九〈三十五丁〉に、妹之臥勢流(いもがこやせる)、十三〈三十三丁〉に、偃為公者(こやせるきみは)〈此外集中に、臥有と書る皆こやせると訓べし、ふしたると訓るはわろし、〉などあり、古今集なる歌、よこほりふせる佐夜の中山、と雲お、奥義抄に、よこほりくやる、とある本あるよし見えたり、久夜流(くやる)、許夜流(こやる)同じ、又万葉五〈二十八丁〉に、宇知許伊布志提(うちこいふして)、十二〈十二丁〉に、反側(こいふす)、十七二十三丁に、等許爾許伊布之(こにこいふし)、此外展転(こいまろび)、反側(こいまろび)などある許伊(こい)も、許夜理(こやり)と一言の活用なり、