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一話一言
三十五
牛天神下孝心の者
金杉水道町家主井筒屋佐兵衛店に、近年引越し参り申候、竹帚商売仕候吉五郎と申候三十七歳、母親へ孝心之者に付、当六月四日〈町奉行〉永田様〈備後守〉へ御呼出し、御白洲にて、孝心に付、銀五枚為御褒美被下置、誠に難有事に候、帰りに八丁堀御掛り様へ被呼被仰聞候は、是迄孝心之者度々心得違いたし、慢心おこし、却て御褒美頂戴之後、不孝にて被叱候者も有之候事故、猶又此上大切孝心可仕由被仰聞候、