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明良洪範
十一
世の諺に、孝行には水が付くと雲り、或老人の物語りに、堀美作守親常の家人長瀬某と雲者、至孝成者にて、老母に孝お尽せり、妻も亦孝なる者にて、夫婦して老母に仕る事尋常ならず、此長瀬妻お迎んとせし時、容顔の美悪にも拘はらず、身労柄らにも拘はらず、氏にも拘はらず、隻孝心なる女お迎んと願ひしに、果してかヽる妻お得たり、〈○下略〉