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雲萍雑志

勢州関の商家に吉右衛門といふものあり、実母に孝養至り、四十余歳のころ、家業に出でゝ帰りける時は、その母いとけなきおりからの心お抱きて、吉右衛門が足お洗ひつかはすべしといふに、背かずして洗ひ給はるに任せたり、この一事お以て、ようづの行ひ違へるところなきお知れり、〈○下略〉