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孝義錄
一/凡例
一此書は完政元年に命ぜられて、御料私領の善行ある者お書上しめ、国郡姓名褒美の年月お書つらね、褒美なきも国郡姓名おしるして世に伝ふ、見る人興起する心のあらば、風化の一助ともなりなんとて、その中に殊に勝れたる者は、これが伝おたて、書つらねたる姓名の上に圏お加ふ、その品目は、孝行者、忠義者、忠孝者、貞節者、兄弟睦者、家内睦者、一族睦者、風俗宜者、潔白者、奇特者、農業出精の類ひなり、
一孝は人の重しとする所なれば、他の善行多しといへども、孝行おもて題す、婦は孝と貞と軽重なし、ゆへに其行ひの至れる方にて名つく、孝子の忠お兼たるも、又是に同じ、〈○下略〉 ○按ずるに、本書は徳川幕府の公撰にして、事蹟全国に渉り、五十巻お以て完了す、