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大鏡
六/右大臣道兼
此殿父おとゞ〈○藤原兼家〉の御いみには、御殿などにもいさせ給はで、あつきにことつけて御簾もあげ渡して、御念誦などもし給はず、さるべき人々よびいつめ、後撰古今ひろげて興言しあそびて、つゆなげかせ給はざりけり、其ゆへは花山院おば我こそすかしおろしたてまつりたれ、されば関白おもゆづらせ給ふべき也といふ御うらみなりけり、よつかぬ御事なりや