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万葉集
五/雑歌
神亀五年七月二十一日筑前国守山上憶良上〈○中略〉
思子等歌一首並序
釈迦如来金口正説、等思衆生如羅喉羅、又説愛無過子、至極大聖尚有愛子之心、況乎世間蒼生誰不愛子乎、
宇利波米婆(うりはめば)、胡藤母意母保由(こどもおもほゆ)、久利波米婆(くりはめば)、麻斯提斯農波由(ましてしぬばゆ)、伊豆久欲利(いづくより)、枳多利斯物能曾(きたりしものぞ)、麻奈迦比(まなかひ)爾(に)、母等奈可可利提(もとなかかりて)、夜周伊斯奈佐農(やすいしなさぬ)、
反歌銀母(しろがねも)、金母玉母(こかねもたまも)、奈爾世武爾(なにせむに)、麻佐礼留多可良(まされるたから)、古爾斯迦米夜母(こにしかめやも)、〈○中略〉
恋男子名古日歌三首〈長一首短二首〉
世人之(よのひとの)、貴慕(たふとみねがふ)、七種之(なヽくさの)、宝母我波(たからもわれは)、何為(なにせんに)、和我中能(わがなかの)、産礼出有(うまれいでたる)、白玉之(しらたまの)、吾子古日者(わがこふるひは)、明星之(あかぼしの)、開朝者(あくるあしたは)、敷多倍乃(しきたへの)、登許能辺佐良受(とこのべさらず)、立礼杼毛(たてれども)、居礼杼毛(おれども)、登母爾戯礼(ともにたはぶれ)、夕星乃(ゆふほしの)、由布幣爾奈礼婆(ゆふべになれば)、伊射禰余登(いざねよと)、手乎多豆佐(ておたづさ)波利(ばり)、父母毛(ちヽはヽも)、表者奈佐我利(うへはなさかり)、三枝之(さきくさの)、中爾乎禰牟登(なかにおねむと)、愛久(うつくしく)、志我可多良倍婆(しがかたらへば)、何時可(いつれか)、毛比等等奈理伊氐(もひとヽなりいで)天(て)、安志家口毛(あしけくも)、与家久母見牟登(よけくもみむと)、大船乃(おほふねの)、於毛比多能無爾(おもひたのむに)、於毛波奴爾(おもはぬに)、横風乃(よこかぜの)、爾母布敷可爾(にもしくしくかに)、覆来礼(おほひきぬれ)婆(ば)、世武須便乃(せむすべの)、多杼伎乎之良爾(たどきおしらに)、志路多倍乃(しろたへの)、多須吉乎可気(たすきおかけ)、麻蘇鏡(まほかヾみて)、氐爾登利毛知氐(にとりもちて)、天神(あまつかみ)、阿布芸許(あふぎこ)比乃美(ひのみ)、地祇(くにつか)、布之底額拝、可加良受毛(かヽらずも)、可賀利毛神乃(かかりもかみの)、末爾麻仁等(まにまにと)、立阿射里(たちあさり)、我乞能米登(わがこひのめど)、須臾毛(しばらくも)、余家(よけ)久波奈之爾(けはなしに)漸々(やうやくに)、可多知都久保里(かたちつくほり)、朝朝(あさなあさな)、伊布許登夜美(いふことやみ)、霊剋(たまきはる)、伊乃知多延奴礼(いのちたえぬれ)、立乎杼利(たちおどり)、足須里佐家(あしずりさけ)婢(び)、伏仰(ふしあふぎ)、武禰宇知奈気吉(むねうちなげき)、手爾持流(てにもたる)、安我古登姿之都(あがことばしつ)、世間之道(よのなかのみち)、
反歌
和可家礼婆(わかければ)、道行之良士(みちゆきしらじ)、末比波世武(まひはせむ)、之多弊乃使(したべのつかひ)、於比氐登保良世(おひてとほらせ)、布施於吉氐(ぬさおきて)、吾波許比能武(われはこひのむ)、阿射無加受(あざむかず)、多太爾率去氐(ただにいゆきて)、阿麻治思良之米(あまぢしらしめ)、
右一首作者未詳、但以裁歌之体、似於山上之操、載此次焉、