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神宮続秘伝問答
愚拙〈○度会延佳〉幼童の比、小鳥お取て玩しに、其悦不斜、其日漸薄暮に至て、彼鳥籠の内に悲鳴し籠より出んとする体お見て、中心其悲に不堪、即時籠のろお開て放やりしより懲て、今年六十八歳まで、家に小鳥お不飼、まして殺生お禁ず、但し出家などの様に、一向不殺生にして、盗鼠おも不殺、死たる魚鳥の肉まで食はざるには非ず、海魚までも、不決明、栄螺、蛤蜊などの類の死たる肉は、食用に味悪ければ、客饗応の為には、不得已生たるお門内へ入侍れども、其外生たる魚鳥お曾て門内に不入、是は強お戒むるにはあらざれども、殺生お不好也、石決明、栄螺、蛤蜊などは、面目もなく惷動する計なれば、余の魚鳥とは各別也、仏者の殺生戒にも非ず、儒者遠庖厨との戒にもあらず、神職の家に生たる故也、