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近世奇人伝

僧鉄眼
僧鉄眼、〈○中略〉摂津国難波村瑞竜寺お建立せり、世人今猶鉄眼おもて其寺お称す、一切経の蔵板お思ひたちて勧進せしに、其料金集れるころ、天下大に餓しかば、師憐みて、件の金お不残施し、又如前勧進せるに、数年ならず又集りたるが、再び五穀不熟にて、餓死多ければ、此たびも此金お施行に尽せり、されども徳の至りにや、第三回の勧進にて、蔵経の印刻成就して、其経お頒つ所の代金お、本寺より巳下、一宗の寺々に配ること今に於て同じ、