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紀伊国物語

甲州にて信玄、〈○武田〉板垣お被殺、其組付曲淵と雲者、組頭の敵お取んとて、信玄お子らふ、信玄その様子お聞給ひ、曲淵お呼出しのたまふは、甲斐国は、皆信玄が譜代也、我お差置、板垣が為お存ずべきか、此段お合点仕、以来我が為お存候へ迚、十貫の加増給た、少しも怒不給、権現様御聞被成、猫は座敷およごせども、鼠お取すべき為に飼之、力様に社可有義なれと、信玄の人おつかはるヽ様お御ほめ被成候、