[p.1166]
東照宮御実紀附錄
十六
伊勢神官戸部太夫といふは、豊臣家先代より祈禱の事奉る御師なり、一とせの戦に、秀頼が内意おうけて、両御所お呪詛し奉るよし聞えて、伊勢の事奉る日向半兵衛正成、中野内蔵允某、訊鞫せしに、まがふ所もなければ罪案お決して、駿府〈○徳川家康〉へ伺ひしに、そは奉行人の心得違なり、秀頼が運お開かむとて、丹誠おこらせしは、御師には似つかはしきことなり、早々獄屋お出し、没入せし器財も、悉く返しつかはせと、仰付られしとぞ、