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有徳院殿御売紀附錄

宿直の藩士、ひそかに酒のみて酔狂に及び、刀おぬきて、金の襖障子お切破りしにより、同僚等おどろきあわてゝ、彼者おとらへたち、其隊長も大に恐れて、いそぎ其よし聞え進らせければ、しばし物ものたまはでおはしけるが、酒に酔ては、たれも過失あるならひなり、たゞ此後よくつゝしむべきことお戒めよ、さてその切破りし障子は、其まゝ補はずしてあるべしと仰ければ、其人はさらなり、同僚の者等までもがへりて重く御咎めありしよりも、恐れつつしみしといへり、