[p.1172]
神皇正統記
神代
三種の神宝おさづけまします、〈○中略〉又大神御手に宝鏡おもちたまひ、皇孫にさづけてほぎて、吾児視此宝鏡当猶視我、可与同床共殿以為斎鐃、とのたまふ、八坂瓊の曲玉、天の〓雲の剣お加へて三種とす、〈○中略〉この三種につきたる神勅は、まさしく国お手持ますべき道なるべし、鏡は一物おたくはへず、私のこゝうなくして万象お照すに、是非善惡のすがたあらはれずといふことなし、そのすがたにしたがひて、感応するお徳とす、これ正直の本源なり、玉は柔和善順お徳とす、慈悲の本源なり、剣は剛利決断お徳とす、智恵の本源なり、この三徳お歙受ずしては、天下のおさまらんこと、まことにかたかるべし、神勅あきらかにして、詞つゝまやかにむねひろし、あまつさへ神器にあらはしたまへり、いとかたじけなきことにや、