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五常訓


中庸曰、義者宜也、尊賢為大、朱子章句雲、宜者分別事理、各有所宜也、周子も宜曰義、釈名曰、義者宜也、裁匍事物使合宜也、諸説皆宜しきお以て義とす、宜しきとは、万事万物の品にしたがひ、其の理おわきまへて相応するお雲ふ、朱子は義者心之制、事之宜といへり、制とはたちわかつ意、裁判するなり、心の制とは心中に善惡おわかつ所の理あるお雲ふ、義の心にあるは利刀の如し、物来れば刀お以てたてば二つとなる、善惡お決断することかくの如し、是心の制なり、義の体とす、事之宜とは、諸事に相応して、其の理の宜しきにしたがふお雲ふ、是義の用とす、事之宜は心の制ありて、善惡お花ちわかちて後のことなり、