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とはずがたり
このごろ〈○享保頃〉事にや、貧しきおのこ、人にやとはれて、あさましき世おふるに、人にも見すべき程のおんな子あり、きはめてかほよし、その友きたりて、そこのおんな子のいろよきに、うかれめにもうれかし、さらばやすくて世おわたらんものおといへば、いなうらじ、すて子なりしものおといふ、さらばいよ〳〵うれかし、誠の子だにしかするもあるおといへば、おのこかしらふりて、かれすてられしいにしへ、おのれ見つけて、あなびんなや、あはれおほしたてんとてこそひろひつれ、貧しき時うらんとては、ひろはぬものお、今はたむかしにそむかんや、いと貧しかるおのこなりとも、むこと名づけてあはせんとて、つひにうけ引いろなし、義おしるといふべし、