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老人雑話

蒲生〈○氏郷〉は江州の士なり、佐々木承禎の臣なりし、後信長に事へ、又太閤に仕ふ、氏郷は勝れたる人也、始は勢州松坂にて、十二万石お所領す、夫より直に会津百二十万石お領す、太閤の時也、此時四十歳許也、承禎は江州一け国お領して大名也、信長に滅されて江州お取らる、承禎の子は四郎殿とて、太閤の時は咄の者に、成て、知行二百石也、蒲生は其臣たりしが、百万石余お領す、伏見などにて、太閤の御前に侍て、退参の時、氏郷昔お思て、刀お持て従はれし事ありしとぞ、