[p.1219]
兼山麗沢秘策

一当上様〈○徳川吉宗〉御盛徳の事、狩野探幽、尭俊より以来、代々の聖人お画たる極彩色の六枚屏風有、俊などには鳳凰の成儀お書ならべ、其形見事成物なるお、先年御物にも成らんかと上覧に入けり、久敷其儘御差置被成、十七日御忌日、麻上下召候御時に、始て上覧ありて、上意に猶見事成絵なれ共、聖人の像お懸物抔にして、床に掛なびするは不苦、屏風と雲物は、筵席の上に置て、平生対坐しても見るもの也、屏風抔に聖賢の像お書て、見る事勿体なき事に思召候間、御返し被成候由上意なり、常々聖像には、仮初にも上下召ずしては、御対し不被成候、