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備前老人物語
一ある時、古田大膳、青木民部少輔に向ひ、貴殿は越前の真柄おうち給ひしと也、其時の様子かたり給へかし、承たくぞんじ候といはれしに、真柄といひしものは、大剛大力のものにて、我等などにうたるべきものにあらず、折ふしの仕合よくて、真柄手負ひ、くたびれし所へ、ゆきかゝりてうちし故、なにの様子もなく候ひしとこたへられけり、かたるにかざりなくの給ふやうかなと、大膳ことの外、聞人みな感じける也、