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常山紀談
二十一
東照宮、後稲田に御感状お賜ふ、太平の後、御旗本の人々、稲田に逢て、大坂夜討の時の事語られよといひしに、九郎兵衛聞て、十五の年の事、隔りてみな忘れたりとて、強て問ども一言もいはず、公方より賜りたる感状の詞おとへども、存寄ざる賞お得て、深くおさめ置、再び見たる事なければ、これも忘れたりとて、語らざりしとなり、