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近代正説砕玉話

一本多中務少輔忠勝、病で卒する時〈○中略〉我黄金一万五千両お儲へおきぬ、次子出雲守忠朝は小身なれば、此黄金お与べしとの遺言なり、〈○中略〉忠政〈○中略〉黄金お封じて、忠朝に与ず、〈○中略〉忠朝〈○中略〉黄金お取る心なし、〈○中略〉忠政之お恥ぢて、皆忠朝に与たれ共、忠朝固辞す、忠政は父の書置不可違と雲、忠朝は次子、其家の財お専にすべからずと雲て、兄弟互に相譲らる、一門の人々感之、黄金お二つに分て、半お忠政、半お忠朝にと定られければ、忠朝まづ其裁判に任せながら、急用あらば、時に当りて申請くべしとて、封お解かず、忠政の倉に置て、身お終るまで、一金おも不取、