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甲子夜話

酒井讃岐守忠勝は、猶廟〈○徳川秀忠〉群臣お捐玉ひし後、毎月御忌に当る日、一室お浄掃し沐浴斎戒し、麻上下お著して自ら様々の物お備へて、其入口お閉ぢ、人の来るお許さず、或時誤りて一人其間へ走り入りしに、読州奠供の前に平伏してありしが、振返おてしい〳〵と言て、手にて制したる形状、真に御前にある様子なりしとなり、家来中密々語り合て、皆其至誠お感じけるとなん、