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栄花物語
一/月宴
広幡のみやすとごろ〈○村上更衣源計子〉ぞあやしう、こゝろことにこゝろばせあるさまに、みかどおぼしめいたりける、内よりかくなん、
あふさかもはてはゆきゝのせきもいずたづねてとひこきなばかへさじ、といふうたお、おなじやうにかゝせ給て、おほんかた〴〵にたてまつらせ給ひける、この御返事おかた〴〵さまざまに申させ給ひけるに、広幡めみやすどころは、たきものおぞまいらせ給たりける、さればこそなおこゝろことにみゆれとおぼしめしけり、いとさこそなくとも、いづれのおほんかたとかや、いみじくしたてゝまいり給へりけるはしも、なこそのせきもあらまほしくぞおぼされける、おほんおほえもひごろにおとりにけりとぞきこえはべりし、
○按ずるに、此歌は、沓冠折句にて、あはせたきもの、すこしの十字お句の上下に置けるなり、