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東照宮御実紀附錄

慶長四年九月九日、重陽の佳儀として、坂城にまうのぼらせ玉ひしが、〈○徳川家康〉城中には兼て異円あるよし群議まち〳〵なれば、本多中務少輔忠勝、井伊兵部少輔直政はじめ、宗徒の人々十二人、いづれも用心して供奉せり、〈○中略〉還らせ玉ふ折から、わざと厨所の方へ廻らせ給ひ、一間四方の大行灯のかけたるお見そなはし、是は外になき珍らしき物なり、わが供の田舎者どもにも見せ度と有て、酒井与七郎忠利おもて、御供のもの悉く召よばれて見せしめられ、内玄関よりしづかにまかでさせ給ひしなり、