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常山紀談
十一
直江兼続、惺窩藤斂夫に対面せんといへども、聞入られず、兼続おして行たれば不在なり、度々招けども行ざるに、今日来りたるにも逢ず、偽て他に出たるとや思はんとて、直江が許に行れしに、直江其日関東に赴きしかば、跡お追て、大津に至て対面あり、直江廃れたる家お急に取立る時、人臣の心得いかにと問、惺窩事お速にせんとせば、却て敗るゝ基なりとそ答へける、後に直江、景勝に進めて旗お揚させ、必家お滅すべしと、怪窩いはれしが、果して景勝に事お起させたるが、其功ならざりき、